12月12日、この景色の見える部屋で彼は旅たちました。

発症から10ヶ月、6ヶ月しか持たないって宣告された中、ついこの間まで仕事にも行きながら病魔と戦った…それは壮絶な戦いだった。
でも、病気の進行もあっという間だった。

先週、最後の家族旅行になるかもしれないと親子3人で行った草津温泉旅行。
大事をとって後から合流した時は、温泉に入れるくらいの体力はあった。
夕食後に、彼から奥さんに贈られたサプライズのケーキ。この日は彼らの25回目の結婚記念日。
〝これが俺の最後にできること〟と一言添えて……
彼女は涙にくれた。
彼の残る体力の全てをふりしぼって、そして覚悟を決めて、行なった草津への旅。
帰りは、バスに乗る体力もなくなり、俺の車で帰宅、そして病院へ。

そして、それから一週間、みるみるうちに衰弱し、奥さんが見守る前で息を引き取った。

窓の外は、

すでに、暗くなっていた。
〝この夜景、お父さんに見せてあげたかったな〟
奥さんがぽつり………
〝きっと、観てるよ〟っていうのが精一杯だった。

俺の一つ下の弟、子供の頃から歳が近いだけに、兄弟というよりライバルだった彼、
おやつの取りっこ、おかずの取りっこ、サッカーの選手としての戦い、
色々な思い出がよみがえってきた。

悲しい、
彼の分まで頑張ろう、